【ご自愛ください】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

【ご自愛ください】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

「自愛」は、「自分を大切にすること。自分の体に気をつけること」で、「御自愛」の形で用いる。「ご自愛ください」は、「御身をたいせつにしてください」という意味で、会話には使われない。手紙や葉書の結語に使うのが一般的である。
文をこのことばで締めくくると、結びのすわりがよく、文がきりっと引き締まる。気候のことばとからめて、
「季節の変わり目、体調崩されぬよう、ご自愛ください」
「寒さも本格的になると思われます。風邪など召されぬよう、ご自愛いただきたいと存じます」
あるいは、季節についての言葉を省いて、
「季節柄ご自愛ください」と書く手もある。こうすると、暑い盛りであろうと、はっきりしない気候のときであろうと、頓着せずに一年中使えるので便利だ。

結びの文の定型としてこれら「ご自愛ください」の使い方を身に付けておくと、手紙のしめくくりをどうしようかと悩むことが少なくなる。
「くれぐれも」を入れると、いっそう相手の身体を気遣う気持ちがこもっている感じがする。私事であるが、個人的には「くれぐれも」を、当て字であるが、「呉呉も」と漢字表記するのが好きである。
また、「お身体、ご自愛ください」と書くのを見かけるが、前述したように「自愛」には「自分の体に気をつけること」の意があるので、これでは重複表現になる。「お身体」は不要であるが、「お身体」を入れるかどうかは自分の感覚に従えばよいだろう。

この言葉の面白い使い方として、シンガーソングライターで俳優、タレントでもあるなぎら健壱さんがスポーツ新聞のコラムの結びに、
「ご自愛しつつお飲みください」と書いていた。さすが酒飲みのなぎらさんならではの表現だといえよう。
なお、同じ意味の言い方に、「お身体を大切にしてください」があるが、「ご自愛ください」のほうが引き締まっている感じがする。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。