健康本を読んでみた! ~ 【心臓を使わない健康法 著者 医学博士 池谷敏郎 マガジンハウス】長年健康系ライターとして活動してきた東/茂由が紹介する書籍。心臓のムダ遣いがあなたの寿命を縮めている

健康本を読んでみた! ~ 【心臓を使わない健康法 著者 医学博士 池谷敏郎 マガジンハウス】長年健康系ライターとして活動してきた東/茂由が紹介する書籍。心臓のムダ遣いがあなたの寿命を縮めている

健康本を読んでみた!

心臓のムダ遣いがあなたの寿命を縮めている

心臓を使わない健康法
著者 医学博士 池谷敏郎 マガジンハウス

循環器を病んでしまいがちな人には類型がある

心臓は片時も休まずに働き続けているが、普段はそのことを意識しないものである。当たり前のことと思っているから、心臓に少々負担をかけても気にならないが、負担をかけ過ぎる生活を長年続けると心臓は破綻する。
本書は、心臓に負担をかけ過ぎる生活を戒め、負担をかけない生活を勧める、心臓の健康法の本である。
本書の「はじめに」の部分で、「前ぶれなく中高年が急死する死因の1位は心臓のトラブルです」と述べ、「長年にわたって外来の前線に身を置いた結果、私には循環器を病んでしまいがちな人の類型がぼんやりと見えてきています」と続けている。

心疾患で急死した2人の例を挙げる。そのうちの1人は仕事熱心で万事ビジネス優先だが、仕事だけの人ではなく、スポーツにも親しんでいたから、自分の体力と健康に自信を持っていた。心身壮健だった。ところがある休日、ジョギングを楽しんだ後、テニスに興じ、クールダウンと称してまたジョギングにひとしきり時間を過ごし、入浴後の夜半、パソコンに向かっている最中に心筋梗塞の発作で倒れてしまった。

もう1人は、典型的なワーカホリックだった。長い長い勤務時間をストレスに苛まれながら耐え続け、深夜に帰宅することが多く、休日も自宅に仕事を持ち帰る“サービス残業”にも音を上げずに頑張り抜いた挙げ句、やっと解放された年末年始の休暇、1人暮らしの部屋で亡くなった。原因は急性心疾患だったことはほぼ間違いないという。

スポーツでも仕事でも、尋常ではない負担をかけると心臓は破綻する

以上の2人の例を挙げ、「ところで、先に挙げた“心身壮健”なスポーツマンと2人目のワーカホリックに共通する点があります。何だと思いますか?」と問いかけ、「それはお二方とも心臓に尋常ではない重い負担をかけ続けてきた、ということです」と答えに導き、次のように説明している。
「心臓は胎児の体内に発生してから、年をとって死ぬ日までずっと休まず働き続ける臓器です。どんなに激しく、頻繁にスポーツマンが動き続ける生活をしたとしても、その人のどの筋肉よりも心臓の運動量は圧倒的に多いに違いありません。心臓は人体の中で最も酷使されている臓器といってもいいでしょう。」

「心臓は鍛えるほど強くなる」という誤解も問題

心臓は鍛えるほど強くなる、という誤解もあると、次のように述べている。
「運動は心肺機能を強化するから、鍛えれば鍛えるほど激しい運動に耐えられるようになる、というような話をもっともらしくする人がいました。ここにも勘違いがあるようです。心臓は鍛える前から、すでに十分にトレーニングを受け、鍛えられた臓器です。にもかかわらず、さらに運動をし過ぎると、その運動をまかなおうとして心筋が過度に肥大し、いわゆるスポーツ心臓になることがあります。この変化は必ずしも病的なものとはみなされませんが、実は突然死の一因にもなります」

日本人の、仕事に生きてきた人の多くは、心臓を使い過ぎる生活をしてきたと思われる。
デスクワークであれ、成果第一主義のビジネス社会において、長時間のデスクワークは心臓に負担をしいる。また、スポーツ選手は別にしても、マラソンやジョギングにいそしむ人たちは多いが、そのうちの何割の人が運動はし過ぎると心臓を傷めると認識している人のだろうか。

心臓を使わない、100の健康法

本書には、「心臓を使わない健康法」として、100の方法が紹介されている。それは1日の生活様式から食事等にわたっている。次のような項目から成っている。

・寝床からすぐに飛び出すのは、心臓にとっても迷惑
・起き抜けの寝惚けたままで布団をたたむと、心臓はとても驚く
・仕事に出かけるときは、速歩は禁物
・(電車の中で)脚を開いて立つだけで、確実に心臓を助けられる
・昼食後ちょっとだけ席で眠ると、心臓の負担は軽減する
・早朝の激しい運動は心臓トラブルの元
・座りっぱなしになってしまう、快適すぎる椅子は選ばない

いずれも、なるほどと納得できる。本書は、仕事もスポーツ、度を超してがんばりすぎてはいけない、という戒めをメッセージとして送っている。働き世代はもちろん、過去に無理して働きすぎた、今はリタイアしている人たちも、心臓を使わない生活に努めるため、本書は参考になるだろう。

循環器の専門医から、「心臓の弁膜は60年ぐらいしかもたないようにつくられているようだ」と聞いたことがある。この言葉は、「心臓に過剰に負担をかける生活を続けていると、60歳で心臓は破綻する(おそれがある)」と言っているものと思われる。

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心臓を使わない健康法
著者 池谷敏郎
マガジンハウス
2014年6月30日 第1刷発行

単行本:188ページ
出版社:マガジンハウス (2014/6/30)
言語:日本語
ISBN:978-4838726790

著者:池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士。
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、東京医科大学病院第二内科に入局、血圧と動脈硬化について研究する。1997年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科・循環器科、現在も臨床現場に立つ。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。各種講演会や新聞雑誌への投稿を行い活動中。テレビのレギュラー番組TBS系「駆け込みドクター」、日本テレビ系「世界一受けたい授業」をはじめTBS系「健康カプセルゲンキの時間」などに出演し、わかりやすい医学解説が好評を博している。
著書に『血管を強くして突然死を防ぐ!』(すばる舎)、『しなやかな血管で若返る』(KKベストセラーズ)、『最新医学常識99』、『最新薬常識88』(ともに祥伝社)、『あなたの体にも20代の血管が戻ってくる!』(日東書院)、他多数。

構成
はじめに
第1章 心臓を使わない健康法 朝の過ごし方
第2章 心臓を使わない健康法 昼の過ごし方
第3章 心臓を使わない健康法 夜の過ごし方
第4章 心臓を使わない健康法 休日の過ごし方
第5章 心臓を使わない健康法 池谷式食事法
第6章 心臓を使わない健康法 心臓の天敵!
おわりに

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紹介文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。