東 雑記帳 - 駐車場、だいじょうぶですか?

東 雑記帳 - 駐車場、だいじょうぶですか?

いつも利用するドラッグストアは、全国で有数のチェーン店で、自分が行く店舗には
百円ショップもある。百円ショップがあるから、よく利用する。
ある日、買い物をしてレジで支払いを済ませると、二十代と思われるレジの男性が、「駐車場、だいじょうぶですか?」
(だいじょうぶですか、だって!?)と、その言葉遣いに少したじろぐ思いがしたが、駐車場を使っているかどうかを聞いているのだろうと解釈し、「ない」と答えた。
「だいじょうぶですか」と問われ、「ない」と答えたのでは、言葉のやりとりになっていないではないか。
「だいじょうぶ」は使用範囲が広く、非常に使い勝手がよい言葉であり、へんな用い方は氾濫している。
そういえばコンビニで「袋、だいじょうぶですか?」と聞かれたことがあったが、「駐車場、だいじょうぶですか」はその上を行くなあ、などと思いながら店を後にした。

二、三日後、またそのドラッグストアに買い物に行ったが、レジで支払いをすませたとき、レジの三十代とおぼしき女性が、「駐車場、だいじょうぶですか?」
今度は少し驚いた。(この店は、誰もがこういう聞き方をするのだろうか)
しかし、思い返すと、この店は十年以上前から利用しているが、以前はこういう言い方は聞いたことはなかった。

このドラッグストアに行ったはずだが、この変な言葉は聞かなかったのだろう、すっかり忘れていた。
あれからおよそ二か月後のある日、このドラッグストアへ行ったとき、レジの女性が、「駐車場のご利用はございませんか」
この言葉遣いを耳にして、(へえ、当たり前の聞き方をする人がいるのだ)と感心した。三十代か四十代と思われるこの女性の対応は行き届いていて、言葉も丁寧でまともで、「ありません」と答えたら、「お気をつけてお帰りください」
一日おいてまた、このドラッグストアに出向いたが、このときのレジの男性も会計が済んだ後、「駐車場のご利用はございませんか」
二人だけだが、変な言葉遣いに接しなかったことに、こちらはなんとなくほっと安堵したのだった。

思い返すに、あの二人だけが変な言葉遣いをしていたのだろうか。それとも、言葉遣いについて指導がなされたのだろうか。
どちらにせよ、耳障りな変な言葉を聞かないですんでよかったが、今後はどうなのだろうか。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。