東 雑記帳 - 最強の民間療法は、断トツで尿療法

東 雑記帳 - 最強の民間療法は、断トツで尿療法

かつて健康雑誌で取材・執筆をしていたが、ほとんどが民間療法に関してであり、自分で行うも療法だった。
当時、親しい編集者がこう言ったのを覚えている。
「なんといっても、いちばんすごいのは尿療法ですよね。効果は図抜けていますね」
この道二十年近いベテラン編集者の言葉である。

尿療法が流行ったのは、平成のはじめで、日本中にまたたく間に広まった。なにしろ、体験者の報告によると、ありとあらゆる病気に効果があった。
健康雑誌は、「○○を飲んだら○○が痛いのが治った」「○○を毎日行ったら、○○病の症状がウソのように消えた」といったように、「よかった」「効いた」オンパレードの体験談である。「治る」ではなく、「治った」だから、薬事法に抵触しない。
まさに医療の世界でいう、「使った、治った、だから効いた」の「三た」の世界である。
尿療法は、読者から体験談が山ほど集まるので、何回も同じ企画が続けられる。

尿療法のすごさは、特にがんに効いたという報告が多いことだった。
ある医師は、大腸癌が再発して肝臓に転移もあるとわかって、化学療法は受けず、ゲルソン療法という食事療法を選択し、同時に尿療法も取り入れた。この二つを柱に独自の方法を実践し、その医師はその後、がんは再発も転移もしなかった。今も健在である。
この医師の体験が健康雑誌で取り上げられるや、ますます、がん治療法としての尿療法は広まっていった。
この当時、アントニオ猪木さんなど、尿療法を実践する著名人も現れてきた。公に勧める医師や鍼灸師、代替医療の専門家なども出てきた。中には、のちに別件で薬事法違反で検挙された、インチキな金儲け医者もいた。
当時、尿療法を勧めていたある鍼灸師によると、全国で尿療法を実践している人は三百五十から四百万人に上るということだった。

もちろん、その鍼灸師は自分も飲尿を実践していた。
それから十年近く経ったのこと。久しぶりにその鍼灸師を取材で会ったが、取材が終わった後、誘われて飲みに行ったとき、彼は問わず語りにこう言った。
「尿を飲むことで、元気になるしスタミナも出る、酒を飲み過ぎても二日酔いにならない、良いことづくめだった。だが、リウマチだけはよくならなかった」
リウマチ体質がよほど強いのだろう、というのであった。そこで、この人は、最後の手段に出て、その療法を実践したところ見事、完璧にリウマチが姿を消したのだが、後日談がある。その療法についてはまた別の機会に……。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。