東 雑記帳 - フケにミカロン。でも、フケが止まらない

東 雑記帳 - フケにミカロン。でも、フケが止まらない

頭皮がかゆくてたまらなくなったのは、中学二、三年の頃だっただろうか。それとも高校生になってからか。
かゆくてたまらないし、かくとフケが出るが、かゆいのでまたかくことになるし、そうなるとますますフケは出てくる。
かゆいから、毎晩風呂で頭を洗うが、洗った後もかゆみはあるし、頭皮が乾くとまたフケがパラパラと、しかも際限なく出てくる。

頭をしきりにかゆがっている自分を見て、ある日、母親が小さなチューブを差し出した。それが、興和の「ミカロン」だった。
それはクリーム状といえば聞こえはよいが、色は焦げ茶色で、さわやかなシャンプーという感じはまったくない。ちなみに当時、髪は石鹸で洗っていたのだろう。
さて、このミカロンで頭を洗うと、見事にかゆみは解消し、フケもおさまる。初めて使ったときは、その効き目に驚いた。

しかし、もちろん、それでその後、かゆみもフケも出なくなったわけではない。頭皮が乾くと、フケは出てくる。ちなみに、このときのフケは臭くない。
次の日はまたかゆくてたまらなくなり、頭皮をかく。かくと、またフケが際限なく出てくるが、男性ホルモンが湧き出ているせいか、湿ったような匂いがして、とても臭い。
悪循環であった。
ミカロンを使っても、使っても、フケは出続ける。
今考えると、ミカロンを使い続けていたから、頭皮はますますはがれ、フケは際限なく出たのだろう。
悪循環に陥ったのは、心身症のようになっていたのだろうか。
当時はよく考えて使っていなかったが、ミカロンはフケ止めの薬だった

そのミカロンが、先頃、昔の雑多なものを整理、処分していたら出てきた。
くすんだピンク色の、懐かしい、チューブ。改めてそこに書かれている文字を見ると、
「ミカロクリーンソフトAコーワ」との表示が4つ書かれている。「コーワ」の文字は半角。
そして、「製造元 興和株式会社」「名古屋市中区三丁目6-29」とある。
さらに「医薬部外品」と明記してあり、容量は10g。
中を開けて見たが、何もない。匂いは残っているかと、鼻を近づけて嗅いでみたが、あの臭いにおいはまったくしなかった。無理もない。五十年はたっているのだから。
あの臭いにおいは蘇らず、今もすっきりしない。
あのにおいは、薬くさい臭いというのも適切ではないし、なんと表現すればよいのか。他に経験したことがない臭いというべきか。

やがて、大学生になった頃には花王の「メリット」が発売され、こちらに転向したが、
しかし一方で、ミカロンも時々使っていたように思う。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。