東 雑記帳 - ハブ茶、豆茶っていうが、ハブソウ、エビスグサ、どっち?

東 雑記帳 - ハブ茶、豆茶っていうが、ハブソウ、エビスグサ、どっち?

ハブソウとエビスグサの続き。自分が生まれた瀬戸内海の島では、子供の頃、朝ご飯は茶粥、使うのは豆茶で、エビスグサの乾燥種子だった。エビスグサ(生薬名は決明子)だとわかったのは三十数年前で、親戚のおばさんが教えてくれた。当時、種をもらったことがあったが、菱形をしていた。
ところがその以前からも、地元の農協で高知産「ハブ茶」の製品名で売られている豆茶があって、買って帰ったことが何回もあった。それは丸い粒であった。
薬草の本を見て、生まれ故郷で栽培された菱形の種子はエビスグサで、農協で買った細長い粒の種子がハブソウであると、確認できた。

ハブソウはハブ茶の名前で売られている。高知産の豆茶が今も家にあるが、商品名は「豆茶」となっている。
ところが、村上先生は、「エビスグサがハブ茶の名前で売られていることもある」と言っていたから、ややこしい。しかも、味は区別できないほど似ていることであるし‥‥。

エビスグサもハブソウも同じように、胃腸をよい状態に保つ働きがあり、そのこともあって茶粥に用いられてきたといわれる。違いは、エビスグサは目に効果があること。漢方生薬名の「決明子」もそのことを表しており、決明とは「目を開く」という意味で、続けて服用すれば、かすみ目や目のただれ、視力低下、目の疲れなどに効果がある。ハブソウにはそういう効果はない。
ところで最近、徳島の友人にエビスグサとハブソウのことをたずねたところ、「このへんは決明子だと聞いたことがある」と教えてくれた。

去年の暮れ、二十歳年上の従兄が亡くなり、葬儀に参列のため故郷の島へ帰った。他の従兄の家に一晩泊めてもらったが、翌日帰ろうとしたとき、従兄の奥さんが、「豆茶、あるけど、持って行く?!」
見ると、茎葉にさやが付いた豆茶がある。
「これは決明子、エビスグサ?」とたずねたところ、「いや、豆茶」
そこで、「ハブ茶じゃないの?!」と、たずね直してみたが、
「いや、豆茶って言うよ。豆茶」

そうだ。どちらもマメ科だから、豆茶でいいじゃないか。嗚呼、性格ゆえだが、我ながら疲れる。
豆茶は、もらっても面倒なので、もらわないで帰った。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。