健康本を読んでみた! ~ 【一流の人はなぜ風邪をひかないのか? MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33 著者 裴英洙 ダイヤモンド社】長年健康系ライターとして活動してきた東/茂由が紹介する、いまだからこそ読みたい、インフルエンザ、新型コロナウイルスの予防にも役立つと思われる書籍

健康本を読んでみた! ~ 長年健康系ライターとして活動してきた東/茂由が紹介する、いまだからこそ読みたい、インフルエンザ、新型コロナウイルスの予防にも役立つと思われる書籍【一流の人はなぜ風邪をひかないのか? MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33 著者 裴英洙 ダイヤモンド社】

健康本を読んでみた!

~ 長年健康系ライターとして活動してきた東/茂由が紹介する、いまだからこそ読みたい、インフルエンザ、新型コロナウイルスの予防にも役立つと思われる書籍

【一流の人はなぜ風邪をひかないのか? MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33】 著者:裴英洙 ダイヤモンド社

どんな名医でも、風邪を予防・根治する100%完璧な方法は知らない

前書きに「なぜ、誰も『正しい風邪対策』」を教えてくれないのか」という見出しが立っていて、次の2つの文がゴチックで記されている。

どんな名医でも、風邪を予防・根治する100%完璧な方法を知らないのです。
すべての風邪ウイルスをやっつける「一撃必殺の技」は、どんな名医も持ち合わせていないのが現状です。

風邪にかからないノーハウを書いている本で、インフルエンザ予防法も紹介されているが、現在蔓延している新型コロナウイルスの予防にも非常に役立つと思われる。

著書で紹介されている略歴欄によると、著者は、医師として臨床にたずさわるかたわら慶應義塾大学大学院(慶應ビジネススクール)で学び、MBA(経営学修士)を取得。現在も医師として臨床業務をこなしつつ、コンサルタントとして日本各地の病院の再建に取り組んでいる。

 

絶対に風邪をひけない医師が実践している方法

著者自身メッセージとして、次のように書かれている。

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「毎日栄養バランスのとれた食事を摂りなさい」
「毎日8時間以上寝なさい」
「風邪になったら、回復するまで会社を休んで、1週間休養をとりなさい」
それが「正しい風邪対策」だとしても、毎日を忙しく過ごす人にとっては、あまりに非現実的な話ではないでしょうか。

「最先端の医療知識を、いかにわかりやすく一般の人々に役立つ形で提供できるか?」
私は、医療とビジネスに携わる人間として、強くその問題意識を持っています。
医療とは常に、現在の理論に基づいた推測と不確実性の中で、それでも前に進んでいくことが必要な分野です。

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医師であると同時に経営者、コンサルタントでもある著者は、大学の特任教授も兼ねている。多忙な日々を送っており、絶対に風邪をひくわけにはいかない。本書はそういう立場の医師が実践している方法を紹介しており、その内容について次のように述べている。

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本書では、現代医学で解明されている最大限の医学的知見や科学的知識を、一般の人が日常的に実践できるレベルの具体策に落とし込んで紹介します。
現役の内科医、救急救命医、薬剤師などの知見と、医療統計データ、150近くの最新の研究論文や文献を総動員し、「風邪をひかないための予防策」と「できる限り早く風邪を治す方法」を紹介してきます。

「バカは風邪をひかない」ということわざがあります。
鈍感な人は、風邪をひいても自覚しないで過ごしている、という意味で使われます。
しかし、私の考えは「人は風邪をひくたびに賢くなっていく」です。
「自分は、どういう状況になったときに風邪をひくのか?」を知り、正しい予防法と対処法を身につければ、風邪をひかない生活習慣を身につけられるのです。

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巻末には参考文献が挙げられている。

 

「風邪ログ」で風邪を見える化

タイトルにもあるが、一流の人はなぜ風邪をひかないのか。一流の人は、自分の身体の異変に素早き気づき、生活のすべてを「風邪モード」に切り替えて即時対応することで、速効回復しているのだという。だから、風邪をひいても、1日で治ってしまう。この本で著者が言う一流の人とは、「風邪をひくパターン」を自己分析でき、対応できるビジネスマンのことを指しているのである。すみやかに、巧みに対応するので、周囲には風邪をひいたように見えないという。

なお、本書では、「身体の抵抗力を高めて予防する」ことについてはほぼ触れていないが、その理由は次のように述べられている。

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一般的に、風邪対策は次の3つに集約されます。
① ウイルスに近づかない
② ウイルスの感染経路を遮断する
③ 身体の抵抗力を高める
ただし、③の「身体の抵抗力」に関しては、医学的なエビデンスが揃っていない要素を多く含むことと、個人差も大きいため、本書では①と②を中心に具体策をお伝えしていきます。

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自分が風邪をひくパターンを知りために、著者が実践し、勧めているのが「風邪ログ」の作成。
「風邪ログ」は、「どこで、何をしたか?」「どんなリスクがあったか?」「どんな症状があったか?」の3項目を、時系列で書き出していき、表にまとめる。こうすることで、行動、環境の何に原因があったか、超初期症状はどういうものだったかなどが浮き彫りになってくる。つまり、風邪の原因を見える化するのである。

 

超初期の段階で手を打ち、風邪をひきそうでひかない状態で踏みとどまる

そして、風邪対策を次の3段階に分け、それらの方法について紹介している。
・風邪をひく前にやること
・風邪をひいてからやること
・風邪をぶり返さないためにやること

3段階のうち、一流の人がもっとも重視しているのが「ひく前」。熱やせき、のどの痛みなど、風邪の症状が出る前の「ちょっとした違和感」を本書では「超初期症状」と呼んでいる。「超初期の段階で手を打ち、風邪をひきそうでひかない状態で踏みとどまるのです」

2章では、超初期症状での対処法を具体的に紹介している。
手洗いとアルコール消毒について、超基本として次のように述べている。
手洗いの基本として、爪は常に短く切っておきたい。

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アルコール消毒は、アルコール自体にもインフルエンザウイルスなどに対する抗菌作用があるが、アルコールが揮発するときの脱水作用を利用した殺菌効果が期待されています。
ですから、手が濡れたままだと、アルコール濃度が薄まり、殺菌効果が下がります。
しっかり手を乾かしたあとでアルコールを使用し、手を振るなどして乾かすようにしてください。

会社やビル、駅などのトイレにはタオルが設置されている場合があるが、ジェット式ドライヤーは、「ペーパータオルに比べて27倍も多く、空気中にウイルスを飛散させたという実証データがあります」

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鼻くそほじりは感染のリスクが高い

また、鼻をほじることについて、2章で「鼻くそほじりはリスクが高い—–自滅しないために」という1項目立てており、「誰しも、人の見えないところで、こっそり『鼻くそ』を掃除しているでしょう」と投げかけ、「伸びた爪で鼻の中をいじってはいけない」「鼻毛を切りすぎない」と書いているが、なるほどとうなずける。
以上のようなきめ細かい対応策がたくさん紹介されている。

風邪やインフルエンザはもちろん、新型コロナウイルスも、それらウイルスが付いた手で顔をさわることによって、目や鼻、口から感染するケースが多いと言われる。ちなみに、谷口恭・大融寺町谷口医院院長は新聞のコラムで、「最強の新型コロナ予防法は鼻にウイルスを入れないこと」との私見を述べていた。

私見であるが、そもそも風邪に関心を持っている医師はめったにいないのではないか。インフルエンザやウイルスの専門家はいるが、この本の著者のような視点に立ち、予防対応策を構築している医師や研究者がいるのかどうか。いるとすれば、今回の新型コロナウイルスに対しても、早期の段階からもう少し適切な対応策を示すことができたのではないだろうか。

災害もなく安全、安心な社会はもはや過去のもので、今後は災害がうち続くと予想されている。地震もそうで、感染症もそうである。今回の新型コロナウイルスが終息したとしても、またいつ新型のインフルエンザ系の感染症が私たちを襲ってくるかもしれない。

そういう社会に生きているからこそ、今回の新型コロナウイルス蔓延をたんなる奇禍としてすますのではなく、これに学び、今後に備えるべきではないか。
著者の「人は風邪をひくたびに賢くなっていく」という考え方に学びたいと思う。

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一流の人はなぜ風邪をひかないのか? MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33
著者 裴英洙 ダイヤモンド社
2018年2月21日  第1刷発行

著者:裴英洙
1972年奈良県生まれ。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)修了。医師・医学博士、MBA。ハイズ株式会社代表取締役社長。著書に「一流の睡眠」など。

単行本(ソフトカバー): 176ページ
サイズ:19cm/175p
出版社:ダイヤモンド社
言語:日本語
ISBN-10: 4478102503
ISBN-13: 978-4478102503

構成
序章 一流の人は、なぜ風邪をひかないのか?
第1章 医者が教えてくれない「風邪の正体」
第2章 「超初期症状」で対処すれば風邪はひかない
第3章 「ひいてしまった……」正しい医者のかかり方と「あの治し方」のウソ
第4章 ぶり返さない・他人にうつさないためにやるべきこと

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紹介文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。