【鼻の下が暇がない(はなのしたがひまがない)】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

【鼻の下が暇がない(はなのしたがひまがない)】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

この表現は、『国語慣用句大辞典』(白石大二編 東京堂出版)に収載されている。面白い。「鼻の下がひまがない」は、次のように説明されている。

口が絶えず動いている。食物を時を欠かさず食べる。口がしゃべり通しである。

そして、次の用例が載っている。

眼(め)の動く内は隙(ひま)なし鼻の下
(裏若葉享保一七)

『裏若葉』は江戸時代中期、享保一七年に編纂された句集。
浅学にして詠み人は誰か知らないし、背景も句意もわからないが、目の動くうちは、鼻の下が暇がないというのだが、何によって暇がないのだろうか。
句を詠むことでか、それともおしゃべりのためか、あるいは食べることでか。全部併せて忙しく、だから元気でいられるというのだろうか。ものを食べ、話をして鼻の下が忙しく休む暇がないから、元気でいられる」といったところだろか。

この慣用句はゲンダイにおいても日常的に使える。
家の者がおしゃべりで、こちらは聞きたくもない話題をしゃべり続けて閉口したとき、
「鼻の下が暇がないんだね」
さも感心したように、鼻の下あたりをつくづく眺めていうと、よいのではないだろうか。すると、この言葉を初めて耳にした場合でも、
こちらが何を言おうとしているか気づくだろう。

食べる、しゃべるの複合で、おかきなどのスナック菓子を立て続けに食べながらしゃべり続けるのに対しては、
「やれやれ、ほんとうに鼻の下が暇なしだね。でも、食べるか、しゃべるか、どっちかにしたほうがいいんじゃない。鼻の下が疲れるでしょう」
「鼻の下に暇をあげなさい」というのもよいかもしれない。

また、こちらが一人で遅い晩酌で、ゆるりと飲み、酒の肴をつまんでいる最中、家の者が話しかけてきて、うるさい場合。
「今は鼻の下が暇がないんだよ。話は晩酌の後にして、悪いけど」といって、追っ払うとよいのではないだろうか。

なお、この慣用句が載っている辞書は他にないものかと、手持ちの辞典類をあたったが、今のところ見つかっていない。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。