【軽い返事に重い腰】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

【軽い返事に重い腰】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

この諺、現代ではまったく消えたのではないだろうか。しかし、この諺を知らない人が初めて聞いても、おおよその意味はわかるだろう。

「軽い返事に重い腰」の意味はそのままで、
「はいはい、ただいま」と返事はいいのに、実際はなかなか行動に移さないことに使う。
情景がまざまざと目に浮かぶ、よくできた成句である。表現形式としても、「何々に何々」を対比させ、しかも使われている言葉も「軽い」と「重い」で対比させている。

すぐやる気がない、あるいは、すぐできないから、よい返事をするのか。無理なことも安請け合いをするのか。性格的にはっきりと断れないから、軽い返事で引き受けてしまうが、できないのか。
それとも、たんに性格的、能力的に、さっさと物事に取り組めないし、処理できないだけなのか。
あるいは、やろうとう思えばすぐできるのに、わざと意地悪でしようとしないのか。

頼んだ(命じた)ほうと、頼まれた(命じられた)ほう、双方の心のうちと呼吸がいろいろと想像できる。「はい」「はい、はい」の返事のトーンにも、相手の心のうちが現れるし、拒否の「はい」の場合もあるだろう。
人に向かってこの言葉を言う場合、「返事だけで、誠意も責任感もない人間だな」との見方、皮肉がこめられていることもある。

この成句は、家族など親しい人間のあいだで使うとよいだろう。
何かを頼んだり命じたりすると、返事だけよいが、いっこうにとりかかろうとしない夫や子供に向かって、妻(母親)が、
「あなたはまったく、『軽い返事に重い腰なんだから』」と言う。
言われたほうは、「今やろうと思ったのに、お母さんはすぐそうなんだから」と言い訳するかもしれないが、それに対しては、
「あなたみたいになんでも「はい」で、口だけでは「はい」が泣きますよ」と返してやればよいだろう。
とはいえ、この言葉、職場や仕事関係で用いるには、現代の感覚ではきつすぎるだろう。