【二合半(こなから)】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

【二合半(こなから)】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉

「二合半」あるいは「小半」と書いて「こなから」と読む。小半と書くことからもわかるが、半分の半分で、四分の一、つまり一升の四分の一、二合五勺(二合半)ということである。
このことから、「少量の酒」を表し、「こなから酒」という言葉もある。用例として、上司小剣の『石川五右衛門の生立』に「毎晩の二合半は欠かさない」とある。
あえて注釈すると、この場合の酒は清酒(日本酒)である。

歌手の小椋佳さんが、週刊誌の連載、清酒蔵元の記事広告に登場し、
「二合半といって、何事もほどよいバランスで愉しむのが人生の極意です。今日の大吟醸のお酒も、好きな料理も、僕にとって嬉しい二合半です(笑)」と語っていた。テーブルにはその蔵元の純米酒の四合瓶がのっていた。
好きな料理も二合半だと言っている。ほどよいバランス、ほどよい量という意味で、「二合半」という言葉を使っている。

「二合半」には「にごうはん」という読みもあり、この場合は量としての二合半を表す他、もう一つの意味がある。かつて、一日五合の扶持米を朝夕二度に分けて食べたところから、武家の下級の奉公人。また、身分の低い奴(やっこ)を表した。

ほろ酔いで上機嫌のことを「二合半(こなから)機嫌」ともいう。
二合半という言葉は、話言葉で使ってもよいが、今では通じないだろうし、書き言葉として、手紙などで用いるとよいのではないか。
小澤實に次の句がある(『句集 瞬間』角川書店収載)
鰻待つ二合半酒となりけり

なお、野暮を承知で付け加えると、現代の感覚では、清酒の二合(360ミリリットル)はけっして少量ではないと思う人も多いだろう。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。